春の食卓に並ぶと、ふっと心がゆるむ野菜。――それが「新玉ねぎ」です。
白くてやわらかくて、手に取るとほのかに甘い香り。スーパーの野菜売り場で見つけると、「ああ、春が来たな」と感じる方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな「新玉ねぎ」にスポットを当てて、旬ならではの美味しさと、40代・50代の私たちの体にうれしい栄養について、丁寧に紐解いてみます。
ちょっと疲れが抜けにくい日や、なんとなく気分が沈む日。そんなとき、やさしく寄り添ってくれるのが、新玉ねぎかもしれません。
新玉ねぎは、通常の玉ねぎとはひと味もふた味も違います。
通常の玉ねぎは、収穫してから風通しのよい場所で乾燥させて保存性を高めます。一方、新玉ねぎは収穫してすぐに出荷される“採れたて”の状態。だからこそ水分たっぷりで、皮はうすく、スライスするとキラキラと光るような透明感があります。
包丁を入れたときの“シャリッ”という音まで心地よくて、キッチンに立つ手が自然と軽やかになります。
そして何より、あのやさしい甘み。生でも辛くないので、スライスしてそのままサラダに。加熱するとさらに甘みが増して、口の中でふわっととろける……そんな春だけのごちそうです。
年齢を重ねると、なんとなく体のバランスが崩れやすくなったり、食事内容を気にするようになったりしますよね。でも、新玉ねぎなら無理なく、日々の食卓で“食べて整える”ことができます。
玉ねぎの香り成分でもある「アリシン」には、血流をよくする働きがあります。体の冷えが気になるとき、手足が冷たいと感じるときなど、アリシンはやさしく内側から巡りを助けてくれます。
また、代謝を高める働きもあるので、年齢とともに「なんだか太りやすくなった」という悩みにも一役買ってくれるかもしれません。
※アリシンは熱に弱いので、生で食べるとより効果的です。
紫外線が強くなる春から夏にかけては、ビタミンCをしっかりとりたい季節。新玉ねぎには肌の調子を整えてくれるビタミンCも含まれており、ちょっとした「内側からのUVケア」にもなります。
美白も保湿も、食べ物から整えていくのが、大人の美しさを育てる秘訣かもしれません。
「朝起きると顔がパンパン」「夕方になると脚がだるい」――そんなときに意識したいのが、カリウム。余分な塩分や水分を外へ出してくれるミネラルです。
塩分の多い食事や、お酒を飲んだ翌日にも、新玉ねぎを取り入れることで、すっきり感をサポートしてくれます。
東洋医学では、春は「肝(かん)」の季節と言われています。肝は、血や気の流れ、そして情緒とも深く関係がある臓器。春にイライラしたり、目が疲れたり、眠りが浅くなったりするのは、肝がちょっとお疲れ気味なのかもしれません。
新玉ねぎは、そんな“めぐり”を助けてくれる食材。とくに気温差が大きく、自律神経がゆらぎやすい春先には、体に負担をかけずに食べられる新玉ねぎが、自然とコンディションを整えてくれます。
「なんとなく不調」「理由はないけれど、元気が出ない」――そんなときこそ、旬の野菜が優しい味方になってくれます。
時間がなくても、手をかけなくても、おいしい。そんな新玉ねぎの魅力を活かしたシンプルレシピをご紹介します。
スライスした新玉ねぎに、かつお節をたっぷりのせて、ポン酢をひとまわし。お好みでごま油を少したらすと、風味がぐんとアップします。お肉料理の付け合わせにもぴったり。
新玉ねぎの皮をむき、上下を少しカットして耐熱皿へ。ラップをして電子レンジで5分前後加熱するだけで、トロッと甘くてスープのような一皿に。バターや塩、しょうゆをちょっぴり添えて。
輪切りにして、味噌汁の具に。火を通すことでとろけるような食感に変わり、いつもの味噌汁がちょっとごちそうになります。わかめや豆腐との相性も◎。
東洋医学では、春は「肝(かん)」の季節。肝は“気”や“血”を全身に巡らせる、流れの司令塔のような存在です。
春は寒暖差や気圧の変化が大きく、自律神経もゆらぎがち。イライラや不眠、だるさなどの不調は、肝がストレスを受けているサインかもしれません。
だからこそ、日々の食事でやさしく整えていきたいもの。
新玉ねぎは、春の短いあいだしか味わえない“自然のごほうび”。甘さも、やさしさも、まるごと味わって、体の中から「ちょっといいこと」を始めてみませんか?
特別なことをしなくても、旬の食材をおいしく食べること。それだけで、きっと体も心も、ちゃんと満たされていくのだと思います。